番外編:『戦国の山城大全』掲載の周山城縄張図盗作について

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周山城縄張図(筆者作成)
 
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『歴史人』№101:戦国の山城大全の縄張図
 
 雑誌『歴史人』№101:戦国の山城大全(2019年、KKベストセラーズ)の56頁「周山城」の縄張図で、「近畿の名城を歩く(吉川弘文館)を参照して作成」とあるが(同書の作図はF氏)、この図は間違いなく筆者(堀口)の縄張図をトレースしたか、もしくはスキャンして着色したものである。遺構の形状や寸法だけでなく、画角や遺構と等高線の位置関係から、等高線の1本1本、それに作図者のトレース時の癖まで寸分違わず同じである。
 
 筆者の周山城縄張図の初出は『織豊系城郭の瓦』(1993年、織豊期城郭研究会)で、その後、地形図に投影して再トレースした図を『織豊系城郭とはなにか』(2017年、サンライズ出版)や、『石垣の城を極める~廃城をゆく6』(2018年、イカロス出版)に掲載している。また当ブログ№13「周山城(京都市)」にも投稿している。
 
 縄張図とは、同じ物を正確に描けば同じ図になるというものでは決してない。まず現地で原図を作図するが、筆者の図は単なるスケッチや略測図ではなく、この時はコンパストランシットを投入し約30日かけて作図したもので、この時点で既に他者の図とは異なる。文字通りの“自画自賛”になるが、近時、京都市教育委員会が作成した赤色立体図と見比べても、何ら遜色がないほどの出来栄えである。
 
 これを自宅に持ち帰りトレースするが、筆者は総てアナログの手作業のため、国土地理院1/25,000地形図を3回拡大コピーして張り合わせ、ここに原図のコピーを貼り込むが、ここで貼り込みの際の誤差が生じ、さらにトレーシングペーパーを被せる際の画角の違いが生じる。
 
 また等高線もペン描きによる手作業のため、その際のブレなどによる誤差も生じる。『戦国の山城大全』掲載図と筆者図と比較すると、考古学で言う“同笵関係”のように何から何までピタリと一致するのである。このような確立は何万分の一の確立どころか、おそらく何億分の一、いや何兆分の一の確立であろう。
 
 この案件については、既にKKベストセラーズ宛に電子メールでその旨を通報している。返信自体は丁寧な文体であったが、『歴史人』編集部の辻岡徹氏の弁によると、図製作業者に依頼して複数の書籍やWEBサイトを参照した、雑誌なので再販はない旨の返答であった。
 
 図中に出典名が“明記”されているところをみると、ハナから盗作したものではなく単純に文献名を間違えた可能性もある。しかし素直に誤りを認めずに言い訳することで、結局は恥の上塗りをしてしまっているのである。
 (文・図:堀口健弐)

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